暗号資産ビジネスと 政治リスク

暗号資産ビジネスを行う上で 政治リスク はとても重要な要素の1つです。特に、事業の拠点になっている州や国で事業に直接関わる規制法案が可決されてしまうと、ビジネスの死活問題にもなりかねません。今回のニューヨーク州の規制法案成立がそのいい例で、ニューヨーク州における今後の暗号通貨産業の成長の大きな足かせになるのではないかと懸念されています。

ニューヨーク州が一部暗号資産ビジネスの規制へ

ニューヨーク州は、炭素系電源に依存するクリプトマイニングを禁止する法案を可決しました。先週金曜日に可決された法案は、同州におけるクリプトマイニング事業に対し、新規参入者の事業設立を禁止し、すでにある事業許可証の更新を一時停止するものです。

この法案可決により、Kathy Hochul州知事が署名すれば、ニューヨーク州がアメリカで初のクリプトマイニングを規制する州となります。

法案はエネルギーと環境問題に対する規制

この法案では、ブロックチェーン上の取引を検証するために特にエネルギーを消費する Proof of Work(PoW)に関わり、かつ、化石燃料を使用する暗号通貨マイニング事業の新規事業を2年間禁止します。また、既存のマイニング作業の電力消費量も基本的に現在の水準に制限されます。

しかし、この法案では、PoWによるマイニングビジネスであっても、再生可能エネルギーによって必要電力がまかなえていれば、規制対象外です。また、PoWではなく、他の多くの暗号通貨が取引の検証に使用している Proof of Stake(PoS)のような、よりエネルギー消費の少ない代替手段を使用することを妨げるものではありません。

しかし、PoWアルゴリズムは、2大暗号通貨であるビットコインとイーサリアムで用いられているので、法律として成立すれば、ニューヨークにおける暗号資産ビジネスに大きな影響を与える可能性が指摘されています。

ビットコインマイニングの環境問題に配慮

今回ニューヨーク州でこのような法案が可決された背景には、ビットコインマイニングが環境問題に悪影響を与えているという議論と政治的メッセージがあります。

Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Indexによると、もしビットコインネットワークが国であった場合、年間電力使用量は世界で32位、アルゼンチンとオランダのちょうど中間に位置することになるそうです。このように大量の電気を消費する事業に化石燃料で発電した電気を使うと環境が更に悪化してしまうので、規制に動いたということです。

暗号資産ビジネスは政治的なリスクが大きい?

2022年からニューヨークシティの知事であるEric Adams氏は、暗号通貨産業に前向きで、ツイッター上で最初の3回の給料をBTCで受け取ることを大々的に宣伝しました。しかし、後に、「暗号資産に対しては前向きだが、クリプトマイニングについては違う」という矛盾したコメントも出しています。

2021年に中国が PoW マイニングを禁止したことにより市場は混乱し、マイニングビジネスの状況は一変しました。中国で公には事業が行えなくなったマイナーがアメリカなど別の国に事業を移したり、資産を売却したりしましたが、同じようなことがニューヨーク州でも起こることが懸念されています。

メタバース弁護士の見解

ニューヨークは、政治面からも新しい何百もの高給の仕事を生み出すために暗号通貨産業に注目しており、「暗号通貨産業の中心地」になろうとしていました。しかし、今回の規制は明らかにそのような方針に逆らうものです。

個人的な見解としては、NFTやメタバース、クリプトゲームを含む暗号資産ビジネスが今後成長して多くの人や組織が当たり前のように活用していくためには、規制が必要だと考えています。しかし、行き過ぎた規制や的外れな政策は、暗号資産ビジネスの成長を助けるものではなく、政治リスクになってしまいます。

暗号資産ビジネスはまだ発展途上のためビジネスチャンスがある反面、規制などの政治リスクが高いです。このような政治リスクは大変不透明で、可決される法案によってはビジネスの死活問題にもなりかねません。元に前回お伝えしたクリプトゲームの通貨大暴落にも中国による規制が関わってきています。

暗号資産ビジネスを行う上で、事業がやりやすい場所に拠点を構えるのは大切です。「やりやすい場所」を選ぶ際に、地元の政治家が暗号資産ビジネスに前向きであることは重要な要素の1つですが、政治は短期間で変わる可能性もあるので、そのリスクも考慮しつつ、最適な拠点を見つける必要があると思います。

参考記事:New York Senate Passes Two-Year Bitcoin Mining Moratorium

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

メタバース知財と法務について

このサイトは、メタバースやNFT、クリプトゲームという最先端の分野における知的財産や法律の話題をまとめたものです。情報源は主に英語圏の媒体をベースにしていますが、日本語で書かれているだけでなく、専門家でなくても理解できるように解説されているメタバースやNFT、クリプトゲームに興味のあるアーティスト・ビジネスマン向けのサイトです。より詳しく>>

追加記事

NFT

NFT IPライセンス解説:“CAN’T BE EVIL” NFT LICENSE NON-EXCLUSIVE COMMERCIAL RIGHTS (“CB-NECR”)

今回は非独占的な商用ライセンスを含を含むNFTライセンスの雛形の解説です。使用できる範囲や制限はさまざまですが、Bored Apeの成功から、NFT保有者に商用利用を認めるNFTプロジェクトも増えてきています。今回紹介するCB-NECRはとても良く書けたライセンス契約なので、解説を読んで、どのような事柄が示されているかを学んでみてください。

もっと詳しく»
NFT

ワーナーミュージックグループがOpenSeaと提携し、アーティストにさらなる Web3 の場を提供

9月29日、世界的な音楽・エンターテインメント企業ワーナーミュージックグループ(WMG)は、NFTマーケットプレイスのOpenSeaと提携し、厳選された音楽アーティストが Web3 コミュニティでファンベースを構築・拡大するためのプラットフォームを提供することを発表しました。この機能により、アーティストはカスタマイズ可能な専用のドロップページで、NFTコレクションや限定版プロジェクトを立ち上げることができます。

もっと詳しく»
ゲーム

規制 圧力対応とその反動によるトークンの暴落

クリプトゲームの場合、稼げるという「play-to-earn」のモデルやユーザーデーターなどの取り扱いが原因で、特定の国や地域でサービスが提供できないという状況がありえます。今回のように、 規制 を未然に回避するためにユーザーが多いと思われるマーケットから撤退すると、ゲームに関連するトークンの暴落にもつながるので、クリプトゲーム開発者としてはこのような国ごとの規制リスクを考慮することが重要でしょう。

もっと詳しく»