バイナンスがロシア政府とつながりのある個人の口座を閉鎖しました。暗号資産は金融 規制 を回避する手段として語られる場合もありますが、取引所の KYC やブロックチェーン上のレコード等、そのような用途には不向きなものです。また暗号資産ビジネスをするには地元政府と協力していくという姿勢も大切になってきます。
バイナンスによるロシア政府関係者の口座閉鎖の実態
バイナンス(Binance)は、ロシアにおけるサービスの制限した翌週に、ロシア高官の親族に関連する複数の口座を閉鎖したことを明らかにしました。
バイナンスの制裁責任者がブルームバーグに語ったところによると、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相の連れ子とプーチン大統領のドミトリー・ペスコフ報道官の娘は、ロシアが2月にウクライナに侵攻して以来、いずれも口座を封鎖されたといいます。
バイナンスはまた、米国制裁違反で米司法省に起訴されたロシアのオリガルヒ、コンスタンティン・マロフェエフ氏の息子も、取引所が制裁対象者とのつながりを持つユーザーの捜索を続ける中でブロックされたことを明らかにしました。最初の口座は3日にブロックされ、マロフェーエフの息子は4月20日に米財務省のロシア関連指定に追加された後、今週口座が閉鎖されたとのことです。
暗号資産は規制回避の有効な手段ではない
ロシアのウクライナ侵攻は、同国が戦争を継続する能力を制限することを目的とした一連の金融制裁をもたらしました。欧州とアメリカの政治家たちは、戦争が始まって以来、ロシアが制裁を回避するために暗号資産を使用するかもしれないと懸念し、暗号資産に何度も注意を向けてきました。
しかし、ほとんどの主要な取引所は、暗号資産は制裁を回避するための手段としては適切なものではないという見解を示していました。その中でもバイナンスのCEOであるChangpeng Zhao氏は今月のCNNのインタビューに対し、暗号資産は追跡可能しやすく、各国政府は暗号取引の追跡方法を改善しつつあると語っていました。
そして、バイナンスはブログ記事で、欧州連合の最新の反ロシア制裁により、ロシアのユーザーに対してより厳しいKnow Your Customer(KYC)チェックを実施することを明らかにしました。
具体的には、暗号資産の保有量が1万ユーロ(1万1000ドル弱)を超える「ロシア国民またはロシアに居住する自然人、またはロシアに設立された法人」を対象としています。国外在住で住所確認ができるロシア人や、国内在住で保有額が1万ユーロ未満の人には、これらの制限は適用されないということです。
メタバース弁護士の見解
暗号資産は犯罪の温床になっていたり、様々な制裁を回避するために使われやすいという理解があります。しかし、この記事を見ても分かる通り、バイナンスを始めとする中央集権型の取引所では KYC (身分確認とバックグラウンドチェック)が行われており、暗号資産はトラッキングが容易なブロックチェーンに取引履歴が記録されているため、暗号資産は制裁を回避する手段としては使いにくい特徴をもっています。
そして、中央集権型の取引所は基本サービスを展開している国における規制を遵守するものです。そうでないとそもそもその国での運営ができなくなってしまうので、ビジネスになりません。
暗号資産ビジネスを行う際は、「規制をかいくぐる」というようなマインドセットではなく、いかに規制団体とうまく付き合って、健全なエコシステムを形成していくかというマインドセットをもって日々の運営をおこなっていくべきだと私は考えています。
参考文献:Binance closes accounts of individuals with links to Russian government