世界のファッション市場は、メタバースとNFTの出現により、前例のないデジタルトランスフォーメーションを経験しています。メタバースはまだ初期段階にあるため、ファッションブランドは、Hermes v. Rothschildの「MetaBirkin」紛争を、メタバースにおける商標権侵害の構成要素に関する将来の境界線を定めるのに役立つ力を持つケースとして注視してきました。
バーチャル世界での侵害が現実世界での侵害と同一の結果をもたらすという結果に
2023年2月8日(水)、マンハッタンの連邦陪審は、ロサンゼルスのデザイナーMason Rothschild氏の「MetaBirkin」NFTが世界的に有名なバーキンバッグのエルメス商標を侵害し希釈していると認定し、Rothschild氏がMetaBirkins.comドメイン名でサイバースクワッティングを行っていると認定しました。Rothschild氏は今後、商標権侵害と希釈に対して純利益11万ドル、サイバースクワッティングに対して法定損害賠償2万3000ドルを支払う必要があります。
この評決は、仮想世界での商標権侵害が、現実世界と同様に結果をもたらすことを示しています。訴訟の初期段階において、ロスチャイルド氏は、バーキンバッグのデジタル画像は「芸術」であり、したがって憲法修正第1条の保護を受けているとして、MetaBirkin NFTはエルメスの商標を侵害していないと主張しました。
Rakoff判事は、Rothschild氏の作品に潜在的な芸術的価値があることを認め、NFTが芸術性を装って営利目的で作成されたかどうかの判断を陪審員に委ねました。陪審員は、NFTは、流用が保護される可能性のある芸術作品よりも、商標保護の対象となる商品に類似しているため、保護されるべき言論ではないと判断したのです。
この評決は、ブランドオーナーにとって、商業商品と芸術的表現物の境界線に関する指針を与えるものですが、この事件の特殊な事実は、NFTクリエイターコミュニティーに十分な影響を与えない可能性があります。裁判の中でエルメスは、ロスチャイルド氏が投資家に対して「金鉱の上に座っている」とメールを送り、メタバーキンが再販されるたびに7.5%の手数料を受け取ることから、自分は「高級品贅沢税ベビー」であるという証拠を提示しました。このような被告人に関する不利な情報は今後の訴訟では、出てこないかもしれません。
この判決は、メタバースの初期段階で活動を行い、ブランド力をメタバースを活用して高めていくブランドオーナーにとって朗報です。そして今のところ、この評決は、メタバースにおける知的財産の無許可使用は現実の世界に影響を及ぼす可能性があるというシグナルを送るものであり、エルメスにとって重要な勝利と言えます。