NFTに関する各国の 規制 状況

13の国・地域におけるNFTの 規制 環境を見たところ、NFTに関する具体的な規制はありませんでした。しかし、特定のNFTがどのように分類されるかによって適用される法律が変わったり 規制 対象になることから、NFTの用途や売り方、NFT化されたコンテンツに関する分析と法的な判断はとても重要になります。また、市場が成長するにつて、知的財産、消費者保護、マネーロンダリングの問題を含め、今後NFTを規制する動きが強まる可能性も大いにあります。

英国における関連 規制

金融 規制

英国にはNFTに関する具体的な規制はありません。その代わり、NFTは暗号資産の一種と見なされています。金融行動監視機構(The Financial Conduct Authority: FCA)はガイダンスの中で、暗号資産をセキュリティ・トークン、電子マネー・トークン、規制対象外トークンという3つのタイプに区別しています。NFTがセキュリティ・トークンの基準に適合する特性を有している場合、Financial Services and Market Act 2000 (Regulated Activities) Order 2001の目的上、特定投資と見なされます。NFTが電子マネーのトークンである場合、Electronic Money Regulations 2011(電子マネー規制法)の規制を受けます。

判断基準

  • セキュリティトークン:株式、預金、保険等を含む特定の投資に関する権利・義務を提供するもの。
  • 電子マネー:電子的に保存された金銭的価値。

NFTが上記のカテゴリーに該当する場合、その販売にはFCAからの認可が必要となります。この場合、マネーロンダリング規制の対象となり、NFTの購入者には KYC チェックとモニタリングが求められます。しかし、大半のNFTは上記の基準に該当しないため、規制の対象外となります。

マネーロンダリング

NFTには巨額の資金が投入されるため、マネーロンダリング業者が犯罪収益をクリーンマネーに変換する方法としてNFTの取引を悪用することが特に懸念されます。NFTが上記のカテゴリーに該当しない場合でも、「価値または契約上の権利の暗号的に保護されたデジタル表現」(a cryptographically secured digital representation of value or contractual rights)の定義に当てはまる場合は、マネーロンダリング規制の対象となる可能性があります。さらに、美術品を原資産とするNFTは、NFTの売却額が1万ユーロ以上の場合、EUおよび英国のアンチマネーロンダリング規制の対象になる場合があります。この場合、NFTの売り手は顧客デューデリジェンスの要件を満たし、取引の記録を保持する必要があります。

税金

投資として購入したNFTを売却して利益を得た場合、その売却益はキャピタルゲイン税の課税対象となります。NFTを取引する企業は、その利益に対して法人税を支払います。NFTで販売される商品およびサービスには、VATが課される可能性があります。

広告

広告基準庁(Advertising Standards Authority: ASA)は、広告が禁止される判決が相次いだことを受け、NFTの広告に関するガイダンスを発表しました。これを避けるため、NFTを広告する企業は、消費者が購入しようとしているものがNFTであることを明確にするとともに、NFTの価値が下がることも上がることもあり得ること、現在NFTは規制されていないことなど、NFT購入のリスクについて消費者に十分な情報を提供する必要があります。 

オーストラリア

オーストラリア政府は最近、暗号通貨を規制対象とする提案を発表しましたが、オーストラリアでは一般的にNFT(デジタル資産)は規制されていません。しかし、NFTが2001年会社法の金融商品の基準(financial product under the Corporations Act 2001)を満たしている場合、オーストラリア証券投資委員会(Australian Securities & Investment Commissions: ASIC)の規制の対象となります。この枠組みでは、デジタル資産の売買にはオーストラリア金融サービス免許が必要です。

中国

中国本土では暗号通貨は禁止されています。しかし、現在のところ、中国本土の個人はNFTを売買することができます。現在、NFTを規制する特定の法律や規制はありませんが、2022年4月13日に中国インターネット金融協会(National Internet Finance Association of China, )、中国証券協会(Securities Association of China)、中国銀行協会(China Banking Association)が共同でNFT関連の金融リスク防止に関するイニシアチブ(以下「イニシアチブ」)を発表しました。このイニシアティブは中国法に基づく規制ではありませんが、3協会はそれぞれ中央銀行、銀行監督当局、証券監督当局の監督下にあるため、このイニシアティブは中国本土の規制当局の姿勢や政策方針を反映したものとなっています。

このイニシアティブでは、NFTは暗号通貨や仮想通貨として扱われていません。ただし、このイニシアティブによると、以下の行動規範に従うことが求められています。

  1. NFTの原資産として証券、保険、クレジット、貴金属などの金融資産を含めず、実質的な金融商品の発行や取引を防止すること。
  2. イニシャル・コイン・オファリング(ICO)を実質的に防止するため、所有権の分割や一括作成等によってNFTの非金融性特性を弱めないこと。
  3. NFTに対して集中取引(集中入札、電子照合、匿名取引、マーケットメイカー等)、連続上場取引、標準契約取引及びその他類似の取引サービスを提供せず、取引所の開設を実質的に防止すること。
  4. ビットコイン、イーサリアム、テザー等の仮想通貨をNFTの発行及び取引における価格決定及び決済手段として使用しないこと。
  5. 発行者、売却者及び購入者の実名認証を行い、顧客の身元情報及びNFTの発行・取引記録を適切に保存し、マネー・ローンダリング防止業務に積極的に協力すること。
  6. NFTに直接または間接的に投資せず、NFTの投資に対する資金援助を行わないこと。

暗号通貨の人気が高まり、暗号通貨や資産に対する規制が厳しくなっているため、規制の余地があり、投資家も販売者も規制がすぐに来るかもしれないと警戒しておく必要があります。 

欧州連合

英国同様、EUにはNFTに関する特定の規制や法的定義はなく、加盟国間で調和された規制体制はありません。欧州委員会は暗号資産市場規制(Markets in Crypto-assets Regulation: MiCA)を発表していますが、この規制ではNFTをその対象から明確に除外しています。しかし、英国同様、NFTが保有者や金融商品のような特定の権利、例えば利益の権利やその他の権利を与える場合は、提案されている規制を明示的に適用する必要があります。このような場合、NFTは「セキュリティ・トークン」として扱われる可能性があります。また、NFTは、NFTに適用されるあらゆる国内法の対象となります。

フランス

フランスでは現在、NFTに関する規制の枠組みはありませんが、デジタル資産は第5次指令の適用範囲に含まれます。NFTがフランス法上のトークンまたはデジタル資産に該当する場合、NFTのマーケティングおよび広告に関する要件が生じ、取引業者はデジタル資産サービスプロバイダーとして登録することが求められます。また、譲渡可能証券など、金融商品と同一の権利を持つNFTは、金融規制の対象となる可能性があります。

ドイツ

昨年、ドイツ政府は、NFTの出現に関連して規制の枠組みを変更する予定はないと発表しました。しかし、ドイツではNFTが一部の法律の適用範囲に入る可能性があります。

暗号資産として認定されたNFTや投資目的のNFTはマネーロンダリング防止要件の対象となり、金融商品の定義に該当するNFTは追加ライセンス要件の対象となる予定です。

金融商品に該当するNFTの販売を希望する場合は、連邦金融監督庁(Federal Financial Supervisory Authority: BaFin)のライセンスが必要となり、NFTが目論見書規制の意味における証券に該当するか、国内規制における資産投資として認められる場合は、NFTの発行者は目論見書の発行が必要となる可能性があります。

イタリア

イタリアにはNFTを規制する特別な法律はありませんが、NFTはイタリア連結金融法第1条第1項第u号に定める「投資商品」(“investment products” as per Article 1, paragraph 1, letter u) of the Italian Consolidated Financial Act) に該当する可能性があり、この場合、販売者にはライセンス取得などの追加要件が課されます。

実際、「投資商品」とは、「金融的性質を有する他のあらゆる形態の投資」を含む幅広い商品のカテゴリーです。 イタリア最高裁は、金融プロモーターが美術品に対して行った特定の取引に関する裁判で、次のように判決を下しています。

「したがって、「金融的性質を有するその他の投資形態」には、判例法及び専門的な学説によれば、その達成が投資家にとって決定的な影響力を持たず、金融的性質を有するリスクの仮定を伴うリターンを期待して資本を運用するすべての形態が含まれる。この定義には、資本の運用を表すあらゆる商品が、いかなる名称であろうと、含まれなければならない。

イタリア当局(Consob)は、「金融的性質を有する投資」には以下のすべての要素が含まれると明言している。

  • (i) 資本の使用
  • (ii) リターンを期待すること
  • (iii) 関係するリスク

したがって、ケースバイケースでNFTが上記の要件を満たす場合、「投資商品」に関連する規制が適用される可能性があります。

NFT が仮想通貨に該当する場合は、ケースバイケースで評価する必要がありますが、マネーローンダリング防止の要件が適用されます。最後に、財政面では、所得税に関して、NFTが知的財産権の譲渡の範囲に含まれる場合、譲渡者が著作者として専門的に活動しているか、またはその活動が臨時的であるかどうかを考慮する必要があります。VATの適用については、著作者がVATの課税対象であるかどうか、また、譲渡が著作権法の範囲に含まれるかどうかを評価する必要があります。 

日本

日本では現在、NFTを規制する具体的な法律はありませんが、2022年1月に政府がNFTタスクフォースを立ち上げると発表し、規制の可能性が示唆されています。現在、NFTの保有者が利益の分配を構成する金銭や資産を与えられる場合、そのNFTは金融商品取引法の有価証券の定義に該当する可能性があります。日本では、NFTが賭博法に抵触しないかどうかを特に考慮する必要があり、特にゲームに使用されるNFTに関連します。

ポルトガル

他の加盟国と同様、ポルトガルにはNFTの法的定義や具体的な規制はありませんが、NFTが仮想資産の定義に該当する場合、マネーロンダリング防止義務が発生することになります。ポルトガルもスペインと同様、投資に該当するNFTの交換、譲渡、保管サービスを提供する企業または個人は、仮想資産サービスプロバイダとして登録する必要があります。

スペイン

スペインではNFTに関する具体的な規制はありませんが、NFTが仮想通貨の定義に当てはまる場合、アンチマネーロンダリング規制の対象となる可能性があります。投資に該当するNFTの交換、譲渡、保管サービスを提供する企業または個人は、仮想資産サービスプロバイダとして登録する必要があります。スペインでは、NFTはその原資産の法律によっても規制されることになります。今年初め、スペイン消費者省は暗号ゲームに関する規制を検討していることを発表しました。また、投資家がリスクを認識できるように、暗号資産の広告に関する規制を課しています。

シンガポール

シンガポールの中央銀行は最近、NFT市場を規制しないことを発表しました。新興市場は未成熟であり、人々が資金を投入しているものを規制することは望ましくないとの考えからです。

しかし、シンガポール法では、NFTが証券先物法(Securities and Futures Act: SFA)上の資本市場商品としての特性を備えている場合、MASの規制要件に従うことになります。例えば、NFTが上場株式のポートフォリオの権利を表す仕組みである場合、他の集団投資スキームと同様に、目論見書要件、ライセンス要件、事業行為要件の対象となります。

同様に、NFTが決済サービス法(Payment Services Act: PSA)に基づくデジタル決済トークンの特性を持つ場合、当該NFTの販売者に特定の制限や義務が課される可能性があります。

アラブ首長国連邦

アブダビ世界市場(Abu Dhabi Gobal Market: ADGM)は最近、「ADGMにおける資本市場と仮想資産の強化に関する提案」と呼ばれるコンサルテーション・ペーパーを発表しました。その提案の中で、ADGMは、企業がNFTの取引を促進することを許可されるためには、自由貿易区の金融規制当局からのライセンスが必要であることを考慮しています。また、NFTはADGMのアンチマネーロンダリングと制裁規則の遵守の引き金となる可能性があるとみなしています。まだ協議の段階ですが、売り手と投資家はこれらの義務を念頭に置いておく必要があります。

NFTは、非常に特定の状況において、暗号資産規制の対象となる可能性があります。この規制は、証券である暗号資産や取引所で取引されている暗号資産を対象としています。NFT化されたものの性質によっては、アンチマネー義務が発生する可能性があります。

米国

規制が適用されるかどうかは、特定のNFTがどのように分類されるかによって決まり、その分類は通常、NFTに関連する特定の権利や属性に依存します。例えば、証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)は最近、違法なトークンオファリングの可能性を調査していると発表しています。現在、NFTは1933年証券法(Securities Act 1933)および1934年証券取引法(Securities Exchange Act 1934)上の有価証券に分類される可能性があり、特定のNFTが有価証券の特性を有する場合、例えば投資契約のように、有価証券とみなされ、扱われる可能性があります。

頻繁ではありませんが、NFTに何らかの金銭的価値が付随している場合、包括的な反資金規制の遵守要件など、金融犯罪取締ネットワーク(Financial Crimes Enforcement Network: FinCEN)の規制義務を含む可能性があります。このような特徴を持つNFTは、州の資金移動業者法に基づく州ごとのライセンス要件を誘発する危険性もあります。

また、ロイヤルティプログラムやリワードプログラムで使用される、金銭的価値のあるNFTもよく見かけます。このようなNFTはFinCENおよび州の資金移動業者に関する規則を回避できる可能性がありますが、このようなプログラムの構成については厳しい規則があります。 IRSは現在NFTにも注目しており、NFTを含む暗号資産から税金を徴収するよう1万通の手紙を送っています。

NFTの作成者にとっては、マーケットプレイスでNFTを販売すると、その利益に対して所得税として納税することになります。投資家にとっては、NFTを購入し、その後NFTを売却して利益を得た場合、キャピタルゲイン税が発生する可能性があります。

参考文献:THE NFT COLLECTION: A BRAVE NFT WORLD – A REGULATORY REVIEW OF NFT’S (PART 2)

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