世界の NFT 市場規模は、2022年の30億ドルから2027年には136億ドルに増加し、年平均成長率(CAGR)は35.0%になると予測されています。このNFT市場を狙って多くの企業がNFT市場に参入していますが、その多くが合わせてNFT関連の商標出願を行っています。
NFT は知財とも相性がいい
NFTの主な利点の1つは、ユーザーが知的財産を所有できるようになることだと言われています。知的財産がブロックチェーンに含まれると、所有権を監視しやすくなります。また、知的財産の所有者が他者の知的財産を侵害していないことを確認することも容易にできると期待されています。例えば、ファッションデザイナーは衣服をデザインし、それをブロックチェーンのスマートコントラクトに埋め込めたとします。そうすることで、消費者はブロックチェーンを利用してデザインを認証し、複製されていないことを確認できるようになるでしょう。
すでに多くの有名ラグジュアリーブランドが、高度なブロックチェーン技術を導入し、偽造品との戦いに挑んでいます。例えば、ルイ・ヴィトン、プラダ、クリスチャン・ディオールなど多くの有名高級ブランドは、Auraという製品の履歴を追跡し、高級品の真正性を証明するためのプラットフォームの提供に焦点を当てた初のブロックチェーン・システムを構築しました。
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商標出願の急増
2022年、米国特許商標庁(USPTO)に提出されたNFTおよび関連技術の商標出願は5,800件を超え、2021年に記録した2,087件の2.5倍以上となりました。この傾向を受け、あらゆる業界の著名なブランドが、デジタル資産をカバーするために商標ポートフォリオを拡大しています。
ビューティ&ファッション
ロレアル
2022年2月、L’OrealはNFTに関連する17件の商標出願を行っています。これらの出願は、Redken、Maybelline、Kiehl’sなど、ロレアルの最も人気のあるブランドを含んでいます。登録されると、これらの商標は以下のものをカバーすることになります:
- 仮想現実ゲームサービスのためのインタラクティブなウェブサイト、娯楽サービス。
- デジタルメディア、すなわち収集品、アート、トークン、NFT;ブロックチェーン技術とともに使用される収集可能なデジタルアイテム、画像、写真、アート、ビデオまたはオーディオ録音を特徴とするNFT;データ保存のために、収集可能なアイテムを表すためにブロックチェーン技術とともに使用するデジタルトークン。
- 仮想商品に関する小売店サービス及びオンラインストアサービス。
ロレアルは仮想世界で大きな動きを見せていませんが、これらの商標登録は、ロレアルがメタバースにショップを設立し、仮想製品を販売するとともに、ブランドのNFTを作成する意図があることをほのめかしています。
エルメス
フランスの高級ブランドであるエルメスは、2022年8月にWeb3空間における自社の名前を保護するための最初の商標を申請しました。この申請は、1月にMetabirkinsの創設者であるMason Rothschild氏が、自身のNFT Metabirkinsコレクションの販売や転売で儲けるために、ブランドのバーキンの名前を使用したとされる訴訟を受けた後のことでした。この訴訟はエルメスに少なからず自社の知的財産の保護をデジタルグッズの領域にまで拡大する動機を与えることになりました。
エルメスの商標出願は、NFTやバーチャルリアリティのほかにも、デジタルウェアラブルを扱う小売店サービス、バーチャルグッズの買い手と売り手のためのオンラインマーケットプレイス、デジタルコレクションやNFTに関連して使用する仮想通貨の電子送金を含む金融サービスも対象になっています。
グッチ
グッチは、早期にNFTを販売した高級ブランドの1つです。2021年6月、グッチはクリスティーズ主催のオンラインオークションで、ブランド史上最高額となる25,000ドルで初のNFTを競り落としました。その後、2022年1月にグッチはデジタルキャラクターブランドのSuperplasticと提携し、SuperGucci non-fungible token(NFT)コレクションを発売しました。直近では、さらに5つの商標を出願しています。
グッチの商標出願の保護対象:
- 仮想資産、仮想商品、デジタルメディアのためのデジタル・マーケットプレイス
- 仮想通貨と電子送金、および仮想通貨の交換
- 仮想商品および暗号コレクターズの金融ブローカー業務
- バーチャルファッションショー
- デジタル証明書の認証・発行及び検証
- NFTに裏付けされたデジタル商品および仮想資産を表示および転送するソフトウェア
- 仮想衣類、アクセサリー、ベルト、ヘッドギア、バッグ、バックパック、財布、ハンドバッグ、コンピュータ&携帯電話ケース、宝石、家具、美術品、香水、ゲーム&玩具、化粧品、不動産、眼鏡、時計、クロノメーター機器など。
ヴィクトリアズ・シークレット
2022年2月、ヴィクトリアズ・シークレットは、ブロックチェーン技術を利用して開発したデジタルコレクタブルとメディア、および仮想世界で利用するためのオンライン衣類とメディアの4つの商標を申請しました。さらに、ヴィクトリアズ・シークレットは、「エンターテインメントサービス、仮想ファッションショーで使用するためのオンライン、非ダウンロードの衣類、下着、靴、ヘッドウェア、アイウェア、バッグ、ファッションアクセサリー、写真、画像、ビデオ、記録映像の提供」を行うと記載しています。
ナイキ
米国特許商標庁によると、ナイキは10月27日、「Nike」、ブランドの有名なスローガン「Just Do It」、スウッシュロゴを出願しました。翌日には、「Air Jordan」と「Jumpman」ロゴの2つの出願が行われました。2021年10月から11月にかけて、合計で7種類の出願が行われています。
その後も、ナイキは「ダウンロード可能な仮想商品」や関連サービスにおける商標の保護申請を続けています。最近、ナイキが自社の商標を使用したNFTを承認なしにミントし、高値で販売していると訴えたスニーカー再販市場「StockX LLC」に対する訴訟を起こし、そのタイミングで更に商標出願が増えました。
食品・飲料
ウォルマート
米国特許庁によると、ウォルマートは2022年12月30日に7件の商標出願を行いました。出案内容は、家具、玩具、スポーツ用品などの商品カテゴリーにわたる「仮想商品」などの概念と、暗号通貨のポートフォリオ管理や電子財布を確立するためのダウンロード可能なソフトウェアを含んでいます。ウォルマートは、これらのサービスを一般消費者だけでなく、他のブランドや企業にもPaaS(Platform as a Service)の形で提供することを検討しています。つまり、他のブランドが暗号コレクターズや暗号アート、アプリケーショントークンを立ち上げるのを支援する計画があるようです。
マクドナルド
ファストフード大手のマクドナルドは2月4日、米国特許庁に、メタバースと実生活で料理を提供する仮想レストランのマクドナルドとマックカフェの両方を対象とした10の商標出願を行いました。また、マクドナルドは「エンターテインメント・サービス」、具体的には仮想と現実のコンサートやイベントを対象とした商標出願もしています。
NFT と知的財産権法
NFTの人気とそれに伴う商標出願の急増は、NFTに関する新たな商標問題の発生と密接に関係しています。NFTは、他の知的財産と同様に、商標として登録されるには一定レベルの識別性を満たす必要があります。さらに、必要なレベルの保護を得るためには、関連するすべてのクラスおよび管轄区域で登録される必要があります。
デジタル資産に関わる企業が増えることは間違いありませんが、クリエイターは、刻々と変化するデジタル空間をナビゲートするためのガイダンスとして、商標弁護士に相談する必要がああるでしょう。
参考記事:From Gucci to Walmart: Growing number of brands are applying for NFT-related trademarks