[用途別] NFTの活用用途がもたらす新たな法律問題

NFTの利用は増え続けています。NFTは画像、動画、音楽に関連することが多いですが、開発者はNFTの新しい有用な用途を数多く検討し、試行錯誤をしています。しかし、NFTの用途が広がるにつれ、特にNFTが法律の複数の領域に触れる形で使用される場合、法的考察の幅が広がります。今回は、NFTを利用したプロジェクトの潜在的な法的影響を分析する上で、NFTを用途別に分類し、関連する法律を理解し、整理してみたいと思います。

注意書き

この記事は、NFTとその多くのアプリケーションを取り巻く法的問題の概要を提供を目的にしています。また原則、米国法の下で起こりうる問題を取り上げます。

NFTの様々なユースケースについては、現在一般的なものと新しいものを含めて説明します。これらのユースケースは分類に分けて説明していますが、この分類は人為的なもので、今後変わることも考えられます。

各カテゴリーについて、法的な考慮事項が含まれる可能性があることを説明します。法的な問題だけでも多岐に渡り、知的財産、プライバシー、証券、契約から顧客情報(KYC)手続、マネーロンダリング防止(AML)コンプライアンス、企業統治法(ガバナンス)などを含みます。

NFTの技術革新については、技術的にまだ初期段階であり、広く採用されていないものもありますが、NFTの新しいユースケースを開拓する可能性があるので取り上げました。

用途別NFTに関する法律問題

1.クリエイティブワークのNFT

NFTといえば創作物の権利を示すものと理解している人が多いと思います。

現在最も一般的なユースケースであるため、わかりやすいNFTの利用方法でしょう。この場合、NFTは画像、ビデオ、音楽、文章など特定の作品に関連付けられます。例えば、あるNFTを特定のアニメ化された猿の画像(Bored Apeなど)に関連付けることができます。別の例では、NFTは曲やアルバムの所有権を意味することもあります。

このようなNFTに関する最も典型的な法的問題は、契約法および著作権や商標権におけるIPライセンスに関わるものです。これはNFTが購入された場合であっても、NFTそのものの保有とは別に著作権等の別の権利がクリエーティブワーク自体に発生している可能性があるからです。著作権のある美術品に関する権利は、NFTの購入者に売却するか、明示的にライセンス供与しなければ、一般的に著作権は著者に残ります。そのため、このクリエイティブワークに対するNFTの利用は、NFTを保有する者が美術品を商業的に利用できるかどうか、利用できる場合はどのような制限があるかなど、どのような権利がNFTと共に提供されるかが問題になる場合があります。

また、NFTを購入する際に、原画の権利について購入者にどのように伝えるか、もよく検討されます。特にNFTが流通市場で販売され、購入時に所有権の条件を明示的に通知するが難しい場合、これは厄介な問題です。NFTといっても様々で、購入ごとに権利が大きく異なる場合があるため、購入者に販売時のタイミングで付属する権利を認識させることは重要です。

というのも、NFTの購入者は、NFTに関連付けられたアートワークを所有権を購入しており、アートワークを商業的に利用するなど、好きなように利用できると考えることが多いです。そのため、購入者が取得する権利について通知しなかった場合、混乱が生じる可能性があります。

しかし、映像や音楽に関連するNFTは、所有者がコンテンツを商業的に利用する権利を持たないことが多くあります。例えば、ビデオクリップに関連するNFTをミントするプロスポーツリーグや組織は、NFTの所有者にそのビデオを商業的に利用する権利を与えるとは思えません。購入者に明確なライセンス条件を提示することは、顧客の混乱を避けるための良い方針です。また、NFTを通して与えられた権利が所有者が変わるごとにスムーズに移動するような規約を提供するのも重要です。しかし、NFTの譲渡方法と提供される権利によって、理想的な規約の条項も変わってくるので、考慮が必要です。

さらに、NFTの全体または一部が人工知能(AI)により生成される場合、別の検討事項があります。AIを利用して芸術作品や文章を生成するシステムが複数開発されている中、NFTの全体または一部が人工知能(AI)により生成される場合に、著作物に対する著作権が存在するかが疑問視されています。このように法的に明確な見解が示されていないため、NFTの全体または一部が人工知能(AI)により生成される場合、特定の状況に基づく個別の調査と判断が必要になります。また、著作権で保護されている作品をAIに与え、与えた作品を変更、拡張、構築した新しい作品を生成する場合、二次創作などの問題が出てくる可能性があります。

単なるJPEGイメージの購入が株式の購入と同じだと考えるのは難しいかもしれませんが、SEC(米国証券取引委員会)は少なくともその可能性を示唆しています。例えば、NFTがデジタルアートの使用に対して所有者が報酬やロイヤリティを受け取る仕組みになっている場合(例えば、ストリーミングサービスで再生される楽曲の場合)、証券的な意味合いが出てくる可能性があります。また、NFTを発行する側が、コミュニティの成長に合わせて特典を提供する場合、例えば、限定イベントに参加できることを約束することも、証券関連の問題を引き起こす可能性があります。

上記の例は、発生しうる問題の一部ですが、KYC(Know Your Customer)手続き、AML(Anti Money Laundering)コンプライアンス、税務コンプライアンスを含むその他の問題も、特定のNFTやそのNFTのマーケットプレイスがどのように実施されるかによって、問題となる可能性があります。

2.ビデオゲームやメタバースでのNFTの活用

開発者は、ビデオゲームや仮想世界(「メタバース」)でのNFTの利用も急速に拡大しています。例えば、NFTは、ゲーム内で特定のキャラクターを使用するためのアンロック能力と関連付けることができます。また、キャラクタの装備を識別するためのインベントシステムの一部として使用され、特定の装備品が対応するNFTに関連付けられることもあります。また、NFTをトレーディングカードに似たランダムな「パック」で販売することも可能です。この場合、特定のプレイヤーのロックを解除するパックをランダムに割り当て、それを目当てにユーザーがカードのパックを購入するようにできます。これらのカードは、収集可能な紙ベースのものに代わりに、プレイヤーはファンタジースポーツの対戦のようなゲームで使用することができ、対戦成績によって賞品が与えられるような仕組みも作ることができます。また「メタバース」の仮想世界では、NFTは、その世界内の特定の仮想の土地の所有権に関連付けることができます。購入者は、その仮想土地の区画を、ビジネスの宣伝のため、あるいは単に楽しむために開発することができます。

ゲームにおいて、特定のキャラクターやアイテムへのアクセスを制限する仕組みは目新しいものではありません。しかし、NFTでは、キャラクターやアイテムをより永続的に関連付けることができるため、プレイヤーはより所有感を持つことができます。さらに、ブロックチェーン上でNFTをプレイヤー間で直接取引することも可能になるかもしれません。多くの人にとって、ブロックチェーン上で表現されたコンテンツは、体験に永続性を与えるため、より望ましいものになるでしょう。

これらのNFTは、デジタルアート作品について前述したような多くの法的問題を抱える可能性があります。例えば、キャラクターが装備する鎧のようなアイテムへのNFTの活用はNFTの一部としてデジタルアートが含まれています。そのため、デジタルアート作品に関する多くの法的問題はビデオゲームやメタバースでのNFTの活用でも問題になる可能性が高いです。さらに、これらのアイテムに機能が追加された場合、別の問題が発生する可能性があります。例えば、このようなNFTの販売収益が、NFTが使用されているゲームの開発に使用される場合、証券取引法が適用される可能性があります。ゲーム内でキャラクターが使用する剣が証券とみなされるのは少し行き過ぎな気がしますが、SEC(米国証券取引委員会)は一般的に、販売収益が機能の構築に使用される場合、暗号トークンが証券であることについて広範な見解を持っています。特に、エコシステムの開発のためにトークンを販売することは、そのエコシステムへの投資として使用されていることを示す可能性があると指摘しています。

話は変わり、カードのパックとして販売されるNFTの場合、コレクターズアイテム、ファンタジースポーツ、ギャンブルという、人間が「ハマる」可能性の高い3つの要素を組み合わせることができます。しかし、賞品を提供するこの種の利用は、(上述の法的考察に加え、)賭博および関連するコンテストや懸賞に関する法律を考慮する必要があり、これらは州ごとに異なる規制を受けることがよくあります。これらの要素は、問題となるNFTの提供内容および購入の管轄区域に応じて検討する必要があるでしょう。

3.現実世界の資産を表現するNFT

NFTはまた、現実の物理的な資産と結びついて、その資産の所有権や何らかの権利を示すような使い方もできます。例えば、不動産の所有権を記録する優れた方法として、NFTが提案されています。不動産に関する物理的な記録を、市役所の書庫やデータベースに保管する代わりに、ブロックチェーンに記録することができます。そうすれば、簡単に検索し、検証することができます。ただし、このような所有権記録は不動産に限定する必要はなく、他の現実世界の資産、例えば絵画、ビンテージカー、時計、宝石など、所有権の移り変わりを信頼できるシステムで管理することにメリットがある高価値の資産へのNFTの活用も提案されています。上記はいくつかの例ですが、NFTに関連付ける物理的な資産の種類は限定されません。また、これらのNFTは、サプライチェーンにおける高価値の資産を記録するために特に有用であり、システムユーザーは資産の出所を証明し、合法的かつ倫理的に調達されたことを確認することもできます。もっとも一般的なブロックチェーンであるイーサリアムは手続きにかかるガス代が高額になる問題がありましたが、安価なレイヤー1および2のブロックチェーンが複数あり、これらのシステムを活用することでコスト面が飛躍的に向上します。

現実世界の物理的な資産の所有権を移転する機能は、広範な法的背景を持っています。そのような機能を備えたサービスは、契約法、不動産法、税務コンプライアンス、統一商事法典(UCC:Uniform Commercial Code)等に関する問題を含む可能性があります。例えば、不動産には、不動産の記録や譲渡の方法などを規定する独自の法律があります。NFTを不動産に使用する場合、NFTに適用される一般的な法律に加え、これらの法律にも対応する必要があります。その他の物品の販売でも、UCCに基づく法律の知識が必要となる場合があり、一部の取引に適用される場合があります。またこれらの譲渡は、連邦および州レベルで検討すべき特定の課税および記録要件に関わる場合があるので、管轄区域に応じて検討する必要があるでしょう。

4.身分証明としてのNFTの活用

NFTはアイデンティティ(身分証明)を提供する方法としても提案されており、「DeSoc」(Decentralized Societyの略)つまり分散型社会の構築の許容範囲について議論されています。特に、NFTがユーザーのアイデンティティを提供し、ブロックチェーンアプリケーションに「評判」(reputation)を付加する方法については、さまざまな提案がなされています。

ブロックチェーン上で取引を行うには、取引相手が現実の生活で誰であるかを知る必要はありません。しかし、ブロックチェーンに記録することで証明され、検証されるような評判を構築したいと思うようなニーズが生まれてくるかもしれません。また本名でなく、特定の名称で疑似匿名(pseudo-anonymous)的に評判を構築することもできます。この方法では、実世界の身元を明かす(つまり、Web3用語で言うところの「doxing」)ことなく、ブロックチェーン上で取引を行うことができますが、同時に、コミュニティの間で好意とポジティブな評判を構築していくことを可能にします。

ブロックチェーン上の取引の多くは、一般的に 「トラストレス」であることを意図しているため、アイデンティティを明確にすることなく取引をすることが可能です。取引は、両当事者が取引に入る前に確認できるスマートコントラクトによって実行することができるのです。例えば、2人の当事者がDeFiローンを結ぶ場合、スマートコントラクトは、最初の当事者が必要な担保を預けたときに実行され、そのときに融資が与えられるので、当事者間で相手を信用する必要がなくなります。その代わり、当事者は、公に検証可能なスマートコントラクトを信頼することになります。

しかし、特定の実在の人物や、少なくともユーザーの評判に結びついた取引を行わなければ、できることに限界があります。例えば、上記のDeFiローンのシナリオでは、ブロックチェーン上(また特定のDeFiローンを提供するサービス)で担保として取り扱えるものが限られます。そのため、借り手の信用力を示す可能性のある他のオフチェーン資産や、借り手が以前にローンを組んで必ず返済していたという実績などは考慮されません。オンチェーン上で確認できる資産に判断を限定することは、重要な機能であるとする意見もあります。それでも、どのような契約を結ぶことができるかは制限されてしまいます。

また、アンチマネーロンダリング(AML)目的で利用者を確認する場合もあるでしょう。AML手続きの導入には、「オフチェーン」情報を利用した個別のプロセスが必要になることが多いです。これを課題と定義し、オンチェーンで完結する標準的な本人確認(KYC)を可能にするサービスが今後出てくるかもしれません。このような証明可能なアイデンティティは、医療記録などの個人情報へのアクセスを許可するシステムや、選挙の投票権などの特定の権利のために特定の個人を識別する必要がある場合に役立ちます。

しかし、身分証明のためにNFTを活用することについては、いくつかの問題があります。まず、多くのWeb3ネイティブが、現実の自分の身元を公にして「Doxing」することに懸念を抱いていることが挙げられます。しかし、この種のNFTを特定の目的で使用する場合、NFTを割り当てるためにKYC手続きが必要になる場合があります。したがって、システムを運用する側は、その実世界のアイデンティティの使用方法に基づいてプライバシー関連の法律を考慮する必要があるかもしれません。プライバシー法と関連して、必要なセキュリティ・レベルに関する規制がこの種の情報には適用されます。最後に、ローンを確保する目的で使用される場合、銀行法および関連する規制があり、これらのハードルを乗り越える必要があるかもしれません。

5.認定証や履歴書としてのNFTの活用

現在、多数の事業者が、コースやその他の認定プログラムを修了した際の「証明書」としてNFTを発行しています。このようにNFTとして証明書を発行することで、修了の事実と知識をブロックチェーン上で証明することができ、自分の履歴を構築することができます。典型的なシナリオでは、最後にテストがあるオンラインコースを受講し、そこでコース修了を示すNFTが付与されます。今の所、主にWeb3技術に関するトレーニングを提供するコースがこのようなNFTの活用をしており、Web3関連企業数社で既に採用されています。

このような使い方は技術系に依存するものでなく、経験またはコース修了を証明するその他の専門的な業務に対してNFTを付与することも可能です。たとえば、フリーランサーは、雇用主からプロジェクトを適切に完了したことを証明するNFTを受け取ることができます。これは、「Web3」的な方法で証明書の信憑性を示すものです。これは、将来の雇用主が確認できるデジタル履歴書のようなものになります。

ブロックチェーンは不変で検証可能なので、証明書を偽造することは不可能ではないにせよ、大変難しいです。そのため、NFTを用いて記録された認定証や履歴書は信頼性の高いものとなります。仕事を探している人は、自分のさまざまな証明書やタスク完了の記録を示すアドレスを提出することができます。さらに、この場合、情報はすべてブロックチェーン上に記録されているため、資格の確認や推薦状をチェックするために、当事者はその人の現実の身元を知る必要がなく、疑似匿名(pseudo-anonymous)のままでいることができます。

しかし、疑似匿名であっても、証明書は一人の人間だけが使用することを意図しているため、プライバシーに関する問題が発生する可能性があります。また、ある人がコースを修了したことを示すNFTを、修了していない別の人に販売することを防ぐ必要があり、NFTの使用を特定の人物に限定するための何らかの制約が必要になるでしょう。

認定証や履歴書としてのNFTの活用は「認証」の1つとして考えることができるので、プライバシーおよび KYCの問題など、身分証明のためのNFTで指摘した問題と重複する点が多いです。また、受領者のNFTの使用条件における特別な規定や、認証を取得していない者が使用した場合を含め、発行者の責任を限定する免責表明を必要とする場合があるでしょう。

6.ガバナンストークンとしてのNFTの活用

NFTは、企業のガバナンスにおける議決権の設定にも利用することができます。一例として、分散型自律組織(DAO)やデジタル領域に基づく同様の組織で投票権を得ることができます。多くのDAOはガバナンスのために標準的なファンジブルトークン(代替可能なトークン)を使用できますが、議決権に関連するNFTの使用も増えてきています。特に、DAOの構造が「一人一票」である場合、特定の人の投票権をNFTによって表現する方がファンジブルトークンよりも都合がいいです。また、これらのNFTは、DAOのメンバーであることや、DAOのために行った仕事を示すこともできます。さらに、毎年新しいNFTを使用することで、DAOに長期的に貢献している人を識別することもできます。

このようなガバナンストークンとしてのNFTの活用の際、NFTを保有する者に与えられる権利は、DAOの規約で特定する必要があるかもしれません。また、NFTが値上がりする可能性や収益源として提供される場合、証券規制の問題が出てくる可能性があります。NFTの使用は、DAOが取る法人の形態(もしあれば)にも影響を与え、コーポレートガバナンスや税法に適切に対処するための知識を必要とする可能性があります。また、ガバナンスNFTが、一人が複数のアカウントを設定して公正な投票権以上の票を得る「シビル攻撃」(Sybil attack)を回避するように構成されている場合、KYCとプライバシーの問題が発生する可能性があります。最後に、NFTとは特に関係ありませんが、DAOには、メンバーがその行為に対して責任を負うかどうかに関連するなど、検討すべき独自の法的問題があります。

7.体験のためのNFT活用

NFTはイベントのチケットの代わりとしても使用されてきました。この場合、NFTはウォレットに割り当てられ、特定のイベントのために一度だけ使用されることになります。ブロックチェーンの不正防止性能を考えると、これは偽造を避けるための有効な方法になりえます。さらに発行者がチケットの譲渡に制限を設けることもできます。例えば、チケットがウォレット間で転送されるたびに手数料を徴収することもできます。これにより、アーティストや会場は、チケットがはるかに高い価値で転売された場合、その価値の一部を回収することができます。

また、このようなNFTは、特定のイベントに参加したことを証明するものとして利用することもできます。NFTのチケットを手にした人は、イベントの記念品として財布の中に入れておき、「自慢」することができます。同様に、NFTはイベントを記念して発行されることもあります。例えば、スーパーボウルでは、参加者に記念のNFTが発行されました。このような記念NFTは、イベントに参加した人のステータスシンボルや記念品として利用できます。

法的に、NFTは契約の一部として使用できるため、この種の使用はその使用条件に関する法的問題に直面する可能性があります。また、顧客が何を購入するのか混乱しないように、NFTの概要や条件を提示することが重要です。スポーツやコンサートのチケットのようなグラフィック形式でこの種のNFTを付与すると、NFTに他の商標や著作権が含まれる可能性があるため、NFTの所有者がいつ、どこでNFTを表示できるかが問題になる場合があります。

8.リソースに対するライセンスまたはサブスクリプションとしてのNFTの活用

NFTは、ライセンスまたは購読の権利を記録する手段としても検討されています。例えば、特定のNFTは、保有者がクラウド内の特定のリソースにアクセスする権利を持っていることを示すオンチェーン手法となる可能性があります。ソフトウェアを使用する際の適切なライセンスの取得とその取締は、消費者向けソフトウェアの登場以来、長期的な問題となってきました。その解決手段の1つとして、特定の技術のライセンスをNFTとして表すことで、適切なライセンスがない状態での技術の利用を防ぎ、その確認と取締能力を向上させることが期待されます。特に、NFTをライセンスとして使用することで、海賊版ソフトウェアからの保護や、二人が同じライセンスを使用しようとする「二重使用」問題に遭遇することなくライセンスを別の人に譲渡または販売することを可能にすることが考えられます。同様に、NFT はサブスクリプションモデルで、特定のサービスに対するサブスクリプションのステータスを記録するために使用することができます。

当然のことながら、ライセンスを表すためにNFTを使用すると、NFTの使用方法(意図的な使用と非意図的な使用の両方を含む)を十分に把握する必要があり、契約上の問題が生じることがよくあります。さらに、NFTや暗号資産全般について言える利点の1つに、擬似的に匿名性を保つことができる点があります。しかし、NFTがライセンスを付与する場合、販売者は、購入者がライセンスを意図した目的に使用しているか、また制裁対象国または団体でないことを確認するためにKYCチェックを行う必要があるかもしれません。このように、NFTをライセンスを表すものとして活用するためには、法律と技術的な面、両方の複雑な交差点を分析し、仕組みを作っていくことが求められます。

9.ネーミングシステムとしてのNFTの活用

NFTのもう一つの最近の応用例は、DNS(Domain Name Service)と同じような使い方をすることです。ネーミングシステムで最も一般的なものは「Ethereum Name System」(ENS)で、トップレベルドメインはスマートコントラクトによって所有・管理されます。ユーザーは、ERC721NFT契約に基づき、「.eth」で終わる名前を登録でき、その名前は他のNFTのように譲渡することができます。DNSのように、ENSは人間が読める名前(例えば、sample.eth)をイーサリアムアドレスのような機械が読める識別子にマッピングすることができます。

これらのドメインには、DNSと同じ問題が多く、特に、誰かが商標名を取得し、それを使って利益を得ようとしたり、実際の所有者から身代金を要求したりするケースがあります。このため、これらの名前をマーケットプレイスで販売することに関連したテイクダウン要求が行われています。しかし、これらの登録はブロックチェーンベースであるため、割り当てられた後に購入した人から登録を取り消すことは困難(または不可能)である可能性があります。

NFTの機能拡張

上記の分析は、NFTのユースケースに関連するものです。しかし、NFTのもう一つの見方は、その用途とは無関係な技術的運用に基づくものです。最も基本的なことですが、NFTはブロックチェーン上に記録されたユニークなデータであり、その機能を定義しています。以下のセクションでは、NFTが使用する技術の一部について、その有用性を拡大する新規開発技術も含めて説明します。この分野は常に成長し、変化しているため、このセクションはいくつかの例を提供するだけになります。

ブロックチェーンのみで完結しているNFT

一部のNFTは、すべての情報をブロックチェーン上に記録します。このケースは通常、記録するデータ量が少なく、「チェーン上」に保存することがコスト的に不利にならない場合に行われます。会員資格やコースの修了を表すNFTなど、数多くのユースケースでこのようなNFTの技術的取り扱いが可能かもしれませんが、一般的に保存に多くのスペースを必要とする創作物(JPEGなど)を表すNFTではあまり一般的ではありません。データの保存にコストがかかるため、ブロックチェーン上にすべてのデータを保存しているNFTは9%に過ぎないという試算もあります。このような保存方法は、リンクされたデータが消えてしまうのを防ぐのに有利ですが、ほとんどのブロックチェーンが公開されているため、チェーン上のデータには誰でもアクセスできてしまうという問題があるのです。また、このようなNFTを作る側にとっては、商標権や著作権に抵触するなどの問題があった場合でも、一度チェーン上に記録されてしまった後は利用を止めることができない可能性があります。

外部データへのリンクとしてのNFT

NFTの大半は、ブロックチェーンの外部に保存されている他のデータへのリンクまたはポインタとして機能します。つまり、ブロックチェーン上にすべてを保持するのではなく、NFTからブロックチェーン外に保存されているファイルへのポインタとしても機能しています。一般的なデータの保存場所としては「Interplanetary File System」(または「IPFS」)が使われる場合が多いですが、NFTを作る側がデータを保存したい場所であれば、どんな場所へもポイントすることは可能です。リンク先のデータの内容によっては、識別情報や個人情報が含まれる場合はプライバシーの問題、安全性や暗号化されて保存されている場合はセキュリティの問題に影響する可能性があります。さらに、ブロックチェーン上のデータとは別に外部にNFTにリンクしたデータがあるので、そのリンク先に保存されているデータの保存環境が問題になることもあります。例えば、NFT自体はその特定のチェーンが存在する限りブロックチェーン上に保存されますが、画像をホストする企業が消滅した場合、実際のデータも消滅し、NFTが何もないポインタとして残る可能性があります。

ソウルバウンドNFT(Soulbound NFTs)

いわゆる「ソウルバウンド」トークンは、特定の人(またはアドレス)に固有のものであり、譲渡されることはありません。そのためNFTを含むこれらのソウルバウンドトークンは、他の人に売ったり、共有したりすることができません。この仕組みの使用は、上述したいくつかの用途を考えればすぐに理解できるでしょう。例えば、身分証明のユースケースとしては必須となるでしょう。また、教育コースを修了したことを示すNFTは、コースを修了していない他者に譲渡できないようにする必要があります。さらに、ソウルバウンドトークンを組織の統治権に使用することも有益です。譲渡不可能な議決権を作ることは、多くの場合、例えばシビル攻撃(sybil attacks)を防ぐのに役立つからです。

ソウルバウンドトークンは一度しか割り当てられないという制限があるため、混乱を避けるためにその使用条件を明示することがより重要になります。間違いや誤解があれば、事後的に修正することがより困難になる可能性があるからです。さらに、ガバナンスのためにソウルバウンドトークンを使用する場合、使用する企業は許容されるガバナンス構造を理解し、コーポレートガバナンス文書で必要な範囲でその使用方法を確実に説明することが必要です。

フラクショナルNFT(分割保有)

特定の価値が高いNFTは個人が直接所有することはコスト的に難しい場合があります。しかし、これを解決するために、NFTの所有権を分割またはトークン化し、NFTの一部の所有権を示すことで、複数の人がNFTの所有権を共有するスキームが考案された例もあります。

NFTの分割所有には、いくつかのユニークな法的問題があります。NFTの主な用途は美術品や収集品であるため、通常、SECの監視の目を逃れることができますが、NFTの一部しか所有していない場合、それを主張することはより困難となります。これらについては、NFTの価値が上昇し、自分の分割された部分を売却して利益がでると仮定すれば、NFTへの投資とより密接に関連する可能性があります。NFTの分割所有の利用は、SECがそのような取り扱いを証券とみなされる可能性を示唆しているものなのです。そのため、NFTの分割保有をプロジェクトで使用する場合、その構造を慎重に検討する必要があります。

セミ・ファンジブル・トークン(SFT)

SFT(Semi-Fungible Tokens)は一般に、代替しやすい性質と代替しにくい性質を併せ持つトークンと理解されています。例えば、ミントされた当初は代替トークン(仮想通貨のようなもの)であり、その後、何らかのイベントに基づいて非代替トークンである NFT に変換されるようなものはSFTとして分類できるでしょう。これはビデオゲームにおいて、ゲーム内の代替可能な通貨を代替不可能なNFTに変換して武器や他のアイテムを購入するような利用が考えられます。NFTを購入するために交換可能なトークン(NFTをEtherで購入することを想定)がすでにあるため、SFTの利点は明確でないかもしれません。しかし、高コストのイーサリアム・ブロックチェーンでは有益であり、ERC-1155という規格により、最大90%のコスト削減が可能であると主張する人もいるため、大幅なコスト削減が可能になります。

SFTは、代替可能なトークンと代替不可能なトークンの両方の特性を持つため、証券とみなされるかどうかに関して、今まで考慮されていない新しい法的問題を含む可能性があります。そのため、SFTを利用する場合、特定のSFTの詳細とその利用方法を検討することが重要になります。

ダイナミックNFT(dNFT)

dNFTは、NFTを管理するスマートコントラクトがどのようにプログラムされたかに従って、時間と共に変化するように設計されたNFTです。dNFTは外部条件に基づいて時間と共に変化するため、より柔軟性があります。例えば、自動車を表すNFTを使用する場合、自動車が適宜に整備されたことを示す情報をNFTに反映させたり、排ガス基準を満たすことが証明されたことを反映させたりすると便利でしょう。NFTは、サプライチェーンで追跡される実世界の資産を表現するために使用することもできます。別の例では、スポーツ選手のdNFTは、そのパフォーマンスに基づいてシーズンまたはキャリアを通じて変化することがあります。

dNFTは、その用途に応じて、通常の NFT と同様の法的問題が発生する可能性がありますが、 変化する能力があるため、より高度に複雑なものとなります。また、dNFT の運用方法に関する技術的な理解も必要となります。例えば、dNFTを管理する契約では、dNFTがどのように機能することを意図しているか、また意図しない形で機能した場合にどう対処するかを検討する必要があります。スマートコントラクトを導入後に変更することが不可能な場合や可能であっても実用性に欠けることもあるので、dNFTの意図的な動作と意図しない動作の可能性の両方を理解できることが重要です。

まとめ

NFTは、様々なユースケースがあるとても興味深い技術です。しかし、その用途が拡大するにつれて、新たな法分野と交差し、進化し続けることになります。これらの新しい法的問題に対処するためには、ブロックチェーン技術の進歩とそれに対応して変化する法的状況、それから拡大するNFTの技術的応用やビジネスモデルにどのように関わっていくのかを理解する必要があります。

参考文献:Expanding Uses for NFTs Lead to New Legal Frontiers

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