先週の土曜日に私の住んでいるジョージア州の知的財産関係の弁護士が集まった2日間のカンファレンスで NFT についてパネリストの1人として話してきました。今年になってからNFTやメタバースネタが法律系のカンファレンスでも話されるようになりましたが、また参加者の理解度は浅く、さらなる啓蒙活動の必要性を感じました。
Corporate IP Institute
今回参加したイベントはCorporate IP Instituteと言って、主に企業内の知財関係者向けのカンファレンスでした。アメリカの弁護士は原則CLE(Continued Legal Education)というクラス単位を毎年取らなければならず、その一環としてこのようなカンファレンスに参加する人も多いです。
このカンファレンスは長く続いていて、AT&T, IBM, The Coca-Cola Company, Meta(Facebook)、BlackRockなど日本でも有名な企業の社内弁護士さんも参加するイベントでした。
私はもともと参加予定ではなかったのですが、突然参加者の1人が来れなくなったので、急遽代理として、このNFTのトピックに関するパネリストとして参加することになりました。
まだ NFT やWeb3に関する知識と認識は浅い
今回、話す側になってよくわかったことなのですが、まだ弁護士の間ではNFTやWeb3に関する知識と認識は浅いです。これは地域差や法律の専門にも多少の影響があると思うのですが、少なくともジョージア州の知財関係者の多くは、NFTに関する基礎知識がまだまだ足りないと肌で感じることができました。
オープンディスカッション形式だったので、参加者から質問がいくつかあったのですが、画像をNFT化したらどうなるのか?何が特別なのか?なぜNFTに大金を支払う人がいるのかなど、ニュースをベースにした「素朴な質問」が多く、その他のセッションで上がったような専門的な質問ではなく、初歩的なものが目立ちました。
しかし、NFT関係の商標訴訟を話したときにはさすが知財の専門家らしく、どのようなことが問題になっていたかについての整理は早かったです。
また、個人的に数人の関係者に話した限りでは、関心や興味はあるものの、どのようにNFTやメタバースを取り扱っていいのかわからない、実際の活用事例を知りたいなど、バズワードとして認識しているものの、どのように自社のビジネスと結びつけるのかがわからないという印象でした。
NFTはBored Apeのように画像をNFT化したものが有名ですが、利用用途はそれだけではありません。また、企業がNFT技術を用いるのであれば、それは単なる画像のNFT化ではなく、よりビジネスに直結した形での活用になってくるでしょう。
他のセッションでもメタバースやNFTに関する質問がいくつかありました。その中で印象的だったのは、「もっと学びたい」「教えてくれる人がいたらぜひ教えてほしい」というパネリストの回答でした。
その人は有名企業の社内弁護士だったのですが、多忙な実務をこなしている中で、さらに独学でNFTやメタバースをフォローするのは時間的に難しいということでした。しかし、専門家がわかりやすく法的な問題点を指摘してくれたり、業者として法務の業務をサポートしてくれるのであれば大歓迎というコメントをしていたのが印象的でした。
弁護士向けのNFTやメタバースの情報配信のニーズは今後より高まってくることをよく感じられたカンファレンスになりました。
メタバース弁護士野口剛史