米国特許庁と著作権局が NFT の知財に関する共同調査を発表:NFTを使ったメディア・コンテンツのIP所有権に関する混乱の解消に期待

11月23日、米国特許商標庁(the U.S. Patent and Trademark Office、USPTO)と米国著作権局(the U.S. Copyright Office)は、連邦官報に共同で通知を掲載し、 NFT に関する知的財産の法的問題について両機関が共同で調査を行うことを発表しました。今回の発表は、NFTの価値の乱高下により、NFTに対するメインストリームの注目が飛躍的に高まったことを受けたもので、調査結果がNFTおよびその作成に使用される基礎的なデジタルファイルの知的財産権をめぐる混乱の解消につながることが可能されています。

知的財産に長けているアメリカ上院議員たちによる要請がきっかけ

今回のUSPTOと著作権局の共同調査の決定は、今年6月に上院知的財産委員会(Senate IP Subcommittee)の委員長であるPatrick Leahy上院議員(民主党、バージニア州)とThom Tillis上院議員(共和党、ノースカロライナ州)が作成した書簡を両庁の長が受け取り、2023年6月までにNFTに関する調査を完了するよう求めてから数ヶ月後になされています。

LeahyとTillisによる書簡は、新興技術としてデジタル資産が急速に普及しているため、NFTと知財権の交わりを理解することが不可欠であると促していました。両議員は、NFTの譲渡が関連資産の知的財産権にどのような影響を与えるか、NFTの文脈でライセンス権が適用されるか、知的財産権の確保と管理におけるNFTの将来の用途はあるか、などのいくつかの質問を検討するよう両庁長官に要請しています。このような要請を受け、今年の7月8日に、両庁は調査を行う旨を両議員に書面で確認していました。

NFT バブルで大きな注目を集める

ブロックチェーンや分散型台帳技術に支えられた暗号通貨と同様に、Bored Ape Yacht ClubのようなNFTコレクションは、収集可能なデジタル資産の使用例が限られているように見えるにもかかわらず、その驚くべき価値の上昇により大きな注目を集めました。現時点では市場は低迷していますが、NFTは2021年時点で113億2000万米ドルの世界市場があると想定されていました。コンサルティング会社のVerified Market Researchによると、NFT市場は2022年から2030年にかけて年平均成長率33.7%で価値が上昇し、2320億ドル近くに達すると予想されています。 

NFT を知的財産的にどのように取り扱えばいいのか?

このように金銭的な価値が大きく高まり注目を集めるNFTですが、NFTと知的財産の関連性も注目を集め、一部の支持者がNFTが著作権者の作品を保護するための新しい技術的手段として機能する可能性が模索されはじめました。インターネット時代と同様に海賊行為や不正なストリーミングが横行する中、著作権擁護者の中には、NFTを、著作権者がオリジナルを完全に管理しながら作品の仮想複製を配布するためのツールと考える人もいます。

その一方で、NFTそのものが、基盤となるデジタル資産の知的財産権の所有者をめぐる争いの火種にもなっています。昨年11月には、有名な映画監督クエンティン・タランティーノが、タランティーノの1994年の映画「パルプ・フィクション」の手書きの脚本にファンがアクセスできるNFTをリリースした後、映画製作会社のミラマックスから訴えられました。この訴訟は昨年9月に和解が成立しましたが、この訴訟やその他のNFTの著作権および商標権に関する訴訟は、すでにIP権が付与されているコンテンツからNFTを作成する権利が誰にあるのか、という問題を提起しています。

実際、USPTOと著作権局のNFTに関する共同研究は、NFTの文脈におけるIP権に関する混乱がかつてないほど顕著に目立ってきている最中に行われるものです。今年8月、ブロックチェーンコンサルティング会社Galaxyは、主要なNFTコレクションに関する調査を発表し、購入者は購入しているNFTの完全な所有権を有しているという広く行われている誤解にもかかわらず、NFT購入者に実際に使用ライセンスを提供しているコレクションは1つだけであることを示していました。またGalaxyは、NFTコレクションの大半が、NFTの基盤となるメディア・コンテンツの知的財産権所有権を明確に伝えていないことを明らかにしました。

デジタル資産の購入に対する先買法理の適用はあるのか?

NFTと知的財産権に関する最大の混乱の1つは、デジタルコンテンツの購入に対する先買法理(first sale doctrine)の影響です。Galaxyの調査によると、AppleやAmazonなどの大手プラットフォームを通じたデジタルコンテンツの購入のほとんどは、メディア・コンテンツに対するライセンスの購入に過ぎず、著作権者の権利を使い果たすような形で所有権を伝達する購入ではないことが指摘されています。

さらに、多くのNFTコレクションは、NFT購入者がデジタル資産のダウンストリーム販売でロイヤリティを得ることができるライセンスを有しており、あたかも取引にIP権が関与しているかのように見えますが、Galaxyは、NFTコレクションの運営者は、これらのライセンスを保有するNFT購入者に通知する必要なく、瞬時にライセンスを変更、あるいは取り消すことが可能であると指摘しています。

Galaxyは、時価総額上位25のNFTコレクションのうち、様々なヘアスタイルと肌の色をした1万点のユニークな女性のNFTコレクションであるWorld of Women(WoW)だけが、NFT購入者に著作権所有権を譲渡しているということを発表しました。WoWのデジタル所有権譲渡契約は、NFTの基礎となる画像の著作権の所有権が最初のNFT購入者に移転することを明確にしています。しかし、この枠組みが二次購入者へのNFTの下流販売に適用されるかどうかは不明であるとGalaxyは指摘しています。

一方、Galaxy社は、世界最大のNFT発行者であり、Bored Ape Yacht Clubの所有者であるYuga Labs社が、明らかに誤解を招く契約書を使用していたことを明らかにしました。Bored Ape Yacht Clubのライセンス契約には、「NFTを購入すると、その基となるBored Ape(アート)を完全に所有することになる」と記載されているものの、契約書には、YugaからNFT購入者に著作権が譲渡される文言がないという指摘がありました。

NFTにおける知財の取り扱いが明確になることを期待

今回の特許庁と著作権局による共同調査の結果、NFTにおける知的財産の所有権やNFT販売における先買法理(first sale doctrine)の適用の有無など、いままでNFTという新しい技術を用いたコンテンツに対して不透明であったことに、何らかの解釈や方針が示されることが期待されます。

NFTは今後も活用される素晴らしいツールの1つだと考えていますが、法的な取り扱い、特に権利周りに関する取り扱いが不透明で混乱や誤解を招いています。今の所、来年の半ばには調査報告が出る予定なので、それによりよりNFTと知財の関わりが明確になることを期待しています。

参考文献:USPTO, Copyright Office Joint Study on NFTs Could Help Dispel Confusion About IP Ownership in Media Content Underlying Digital Assets

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