NFT への関心が高まる中、米国特許商標庁と米国著作権局が、 NFT による知的財産権への影響に関する調査を始めることになりました。すでに NFT 販売に係る知財訴訟も起こっているので、両行政機関による調査は今後の NFT と知財の関係性を明確にし、然るべきルール作りに不可欠なものになると思われます。
議員からの要請で調査を開始
NFTの調査は、6月にPatrick Leahy上院議員とThom Tillis上院議員が、急成長するNFTが知的財産権に及ぼす潜在的な影響について深く掘り下げるよう要請したことを受けて行われるものです。
両行政機関は、この要請に対応し、NFTの状況に詳しいさまざまな関係者との協議を含む行動計画を立案するための予備的な話し合いを行い、調査を実施することに同意しました。
内容としては、幅広いテーマが検討される予定で、NFTの将来の応用に伴う潜在的な知的財産の課題、NFTの所有権の移転に伴う権利、ライセンス権や侵害、NFTクリエーターに与えられる潜在的な知的財産権などが含まれます。
すでに NFT 販売における知財侵害訴訟は起こっている
NFTの領域は、ここ数ヶ月、自社製品や知的財産を侵害された企業にとって、すでに多くの問題を引き起こしています。多くの有名ブランドが、関連する知的財産権を侵害した可能性のあるNFTマーケットプレイスやプラットフォームに対し法的手段を求めています。
世界的なスポーツウェアブランドであるナイキは、2月にライセンスを受けていないスニーカーNFTの販売を通じて同社の商標を侵害したとして、オンライン再販業者StockXに対して法廷手続きを開始し、大きな話題となりました。同社は、ナイキのNFTスニーカーに、換金可能な実物の靴をセットして販売していました。
また、アメリカのラッパーLil Yachtyは、カリフォルニア州で音楽会社2社に対して商標権侵害訴訟を起こし、法廷闘争を繰り広げています。Yachty氏は、これらの会社が彼の肖像と名前を使用して、NFTのコレクションを発売するための資金として650万ドル以上のベンチャーキャピタルを調達したと主張しています。
制作会社のMiramaxも、批評家から絶賛された映画監督のQuentin Tarantinoが1994年の大ヒット作『Pulp Fiction』に由来するNFTを発売しようとしたため、2021年11月に法的手段に訴えました。スタジオ側は、Tarantinoが7つのノーカット脚本シーン、独占解説、オリジナルの手書き脚本を含むNFTコレクションを発売しようとしたため、著作権を侵害したと主張しました。
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今後NFTが普及するにつれ、このような訴訟は更に増えることが予想されます。そのような中で米国特許庁と著作権局がNFTのIPへの影響を調査へ乗り出し、課題を明らかにしていくステップは必要なものだと思います。
参考文献:US trademark and copyright offices to study IP impact of NFTs