Web3における アダルトコンテンツ の検閲問題

Web3は分散型という特徴から、中央集権的なWeb2の時代の制約から解放された、インターネットの新しいモデルを約束するものとされています。しかし、 アダルトコンテンツ に関しては話が違うようで、この新時代においても、昔と同じパターンの検閲が行われているようです。

アダルトコンテンツ を歓迎しない環境

大手NFTマーケットプレイスは、Web2のソーシャルメディアと同様に、アダルト系のコンテンツを「シャドウバン」(目につきにくくする)しているといいます。さらに、NFTを宣伝するためには、依然としてInstagramやTwitterなどのソーシャルプラットフォームを利用したマーケティング活動が必要なため、アダルトコンテンツを作るアーティストとしては宣伝するチャンネルが非常に限定されてしまいます。そして、NFTのコレクターでWeb3をサポートする人々であっても、依然としてアダルトコンテンツを疎外する人が大半のようです。

このような状況の中、「Web3の世界であっても、私たちが住んでいるディストピアの反映に過ぎず、状況が変わることはない」と、悲観的なコメントをするアダルトコンテンツのアーティストもいます。

アダルトコンテンツ NFTの現状

1970年代のビデオデッキから2010年代初頭のビットコイン(BTC)まで、セックスワーカーやアダルトコンテンツ制作者は、歴史的に新しいタイプのテクノロジーをいち早く受け入れてきました。その伝統を受け継ぎ、多くの人々が「Punks and Apes」に熱狂する前に、最近のNFTブームに足を踏み入れました。しかし、この仮想通貨の低迷期、セックスワーカーがお金を稼ぐ方法として、NFTは特に人気があるわけでもなく、儲かる手段でもない状況にあります。

あるアーティストによると、今現在NFTを積極的にミントしているアダルトコンテンツを作成するアーティストは100人以下だと推測されています。

通常のマーケットプレイスでは敬遠されるので、TreatDAO、CumRocket、Unique.Fansといった、特にセックスワーカーやアダルトコンテンツ制作者を対象にしたNFTプラットフォームもありますが、そのようなプラットフォームを利用してコンテンツを提供する人はまだ少ないです。

例えば、TreatDAOのウェブサイトには「450人以上のクリエイター」が掲載されていますが、そのうち何人がアクティブユーザーであるかは明記されていません。まだベータ版であるCumRocketの担当者は、同社のプラットフォームには現在、「8703人のバイヤーが登録されており…、2,027人のクリエイターがいる」と述べていました。セックスワーカーとアダルトコンテンツクリエイターのために作られたWeb3企業の中で最も長い歴史を持つSpankChainは、約60人のモデルと協力してNFTをミント・販売していると、このプラットフォームで働く関係者はコメントしています。

このようなプラットフォームを利用してNFTを販売しても、ほとんどの人がそこからの収入はごくわずかで、思ったよりもうまくいっていないような状況が多いようです。

アダルト向けプラットフォームと一般的な NFT プラットフォームの違い

「アダルト」に特化したNFTプラットフォーム、特にCumRocket、TreatDAO、Unique.Fansとの取引で、あるセックスワーカーは不誠実な対応をされた経験があることをシェアしました。これらのサイトの運営者は、アダルトクリエイターがサイトに正式に参加する前にコンテンツを要求するという「プロらしくない」事例があるらしく、この種のセックスワーカーに焦点を当てたプラットフォームを不誠実な組織だと感じることがあるそうです。このセックスワーカー曰く、「セックスワーカーは常に新しい、より良いプラットフォームを必要としていることを人々は知っています。だから、このような「アダルト」に特化したNFTプラットフォームはこのセックスワーカーの心理を利用して、一般的なプラットフォームより良いふりをしようとしますが、実際はそうではありません」とコメントしています。

その反論として、CumRocketの代表者は、「クリエイターは有効な身分証明書を持ち、18歳以上であればプラットフォームに参加することを歓迎する…そして、無料のコンテンツを送る必要はありません」と回答していました。

このように「アダルト」に特化したNFTプラットフォームがクリエーター(の一部)に受け入れられていない現状がありますが、OpenSea、Rarible、SuperRareのような一般的なNFTプラットフォームでは、アダルトコンテンツは歓迎されるコンテンツではありません。

多くの大手NFTマーケットプレイスでは、性的に露骨なコンテンツが埋もれてしまうため、「どのホームページでも宣伝されることはない」といいます。OpenSeaの広報担当者は、「性的に生々しいコンテンツは、それが実在の人物に関わるものであれ、表現に関わるものであれ、『NSFW』というラベルが付けられます。NSFWは、Not safe for workの略で、裸の人の写真など、不快感を与えるものが含まれているため、限られた人だけで見るべきインターネット資料を共有する場合に使用されます。このようなNSFWとラベル付けされたNFTは、OpenSeaを利用することはできますが、検索やトレンドには表示されないようになっており、NSFWコンテンツを含むコレクションは、OpenSea上で確認することもできないようになっています。そのため、「NSFWクリエイターとそのコンテンツ」を見つける唯一の方法は、OpenSea外で共有された直接リンクをクリックすることだけになっています。

プラットフォームに頼らない生き方

あるアダルトコンテンツ制作者は、重要なのは、大手NFTプラットフォームに依存するのではなく、アダルトクリエイターとして自分でNFTを作成することです、とコメントしています。OpenSeaやRaribleのようなプラットフォームではなく、自分でNFTを作成することで、クリエイターは自分の作品を「可能な限りコントロール」できるようになると言います。そうすればクリエイターが自分の作品に対してより直接的な自律性を持ち、生計を立てるために仲介者に頼らなくてもよくなるからです。

実際にManifoldなどのツールを使えばNFTのコントラクトは作れるようです。しかし、実際にNFTを自分でミントするには、技術的なハードルが高く、学ばなければいけないものも多いそうです。そのため、すべてのアダルトコンテンツを作るアーティストが気軽に自力でNFTを作成するというのはまだ難しいのが現実のようです。

アダルトNFTの未来は?

何が「アダルト」や「NSFW」コンテンツに該当するのか、しないのかについては、グレーゾーンが多く存在します。例えば、写真家がとったヌード写真のNFTは「芸術」に分類され、一般のNFTプラットフォームでも検索可能なのですが、セックスワーカーのヌードNFTはNSFWに分類されプラットフォームをフルに活用できないというケースがあるようです。

しかし、Web3支持者の間で重要なWeb3の要素として、インターネットユーザーが見たり、売ったり、買ったりするのに「安全」なものとそうでないものを決める大きな権力は存在すべきではないという考えがあります。

しかし、現状ではアダルトコンテンツのコンテキストでは、Web3コンテンツ・プラットフォームがWeb2コンテンツ・プラットフォームの足跡をたどっていると言わざる負えないでしょう。例えば、OnlyFansは主にセックスワーカーが使うマーケットプレイスとしてスタートしましたが、人気が出ると、セックスワーカーをプラットフォームから追い出すと脅しています。同じようなことがWeb3のプラットフォームでも起こる懸念もあります。

また、ブロックチェーン技術を使ったNFTがユーザーがアダルトコンテンツを楽しむのに少し問題がある点もあります。例えば、(個人の特定はできないものの)コレクターのウォレットにあるNFTはネット上で公開されており、買い手は自分のウォレットがポルノでいっぱいであることを他人に見られたくないという理由で、アダルトコンテンツのNFTの購入は控えるかもしれないと考えられています。そのため、アダルトコンテンツ制作者は、あるコレクションの購入者が集まってプロジェクトを盛り上げ、互いに購入し合うことでコミュニティを形成し、全員が投資した作品の価値を高めるという、一般的なNFT成功モデルに従うことが難しくなっています。

このように検閲が行われないように思えたWeb3であっても、アダルトコンテンツは苦戦を強いられています。ネットとエロは切り離せない関係にあるので、Web3でもアダルトコンテンツはなくならないと思いますが、どのようなカタチに変わっていくのかはまだ未知数としか言えないでしょう。

参考記事:Web3 Is Still Censoring Sex Workers

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